「ノーミュジック、ノーライフ」
わたしは いる のでしょうか
わたしは いない のでしょうか
わたしは
自動改札機を通るごとに
乳色のセロファンを
躯にまとう
やがて 体温は渋谷区と均衡し
湿潤は搾りとられ
心臓の弁膜は
グリニッジ標準時を刻んで
鉄の味がしない血流を送り出します
人の言葉を少しずつ忘れ
わたしは
踵のない
紙粘土の人形になるのです
だれかと つながりたいわけではありません
だれかを 遠ざけたいとも思いません
わたしは 今日も
温暖で曖昧な五月の交差点に佇んで
養分がたっぷり溶け込んだ
その羊水の浸透圧を窺っている
群れている 群れている
(わたしは、歌をしりません。踊りをしりません。携帯には五人しか登録していません。アップルコンピュータしりません。ファミレスのソファのような服を着ています。大卒の男と付き合ったことはありません。代官山に行けません。中目黒にも行けません。詩がわかりません。ツイッターやってません。ノーミュージック、ノーライフ)
信号が青にかわった瞬間に歩き出し
交差し
人の体臭を嗅ぎ
人の言葉を体に溜め込んで
向うに側に着いたら 踵を返し
その母胎の往復運動の中で
呼吸を思い出し
痛点を取り返し
わたしは 安心できるのです
とうとう わたしは いたのです
わたしは いま
母の子守唄を思い出したところです
わたしは いる のでしょうか
わたしは いない のでしょうか
わたしは
自動改札機を通るごとに
乳色のセロファンを
躯にまとう
やがて 体温は渋谷区と均衡し
湿潤は搾りとられ
心臓の弁膜は
グリニッジ標準時を刻んで
鉄の味がしない血流を送り出します
人の言葉を少しずつ忘れ
わたしは
踵のない
紙粘土の人形になるのです
だれかと つながりたいわけではありません
だれかを 遠ざけたいとも思いません
わたしは 今日も
温暖で曖昧な五月の交差点に佇んで
養分がたっぷり溶け込んだ
その羊水の浸透圧を窺っている
群れている 群れている
(わたしは、歌をしりません。踊りをしりません。携帯には五人しか登録していません。アップルコンピュータしりません。ファミレスのソファのような服を着ています。大卒の男と付き合ったことはありません。代官山に行けません。中目黒にも行けません。詩がわかりません。ツイッターやってません。ノーミュージック、ノーライフ)
信号が青にかわった瞬間に歩き出し
交差し
人の体臭を嗅ぎ
人の言葉を体に溜め込んで
向うに側に着いたら 踵を返し
その母胎の往復運動の中で
呼吸を思い出し
痛点を取り返し
わたしは 安心できるのです
とうとう わたしは いたのです
わたしは いま
母の子守唄を思い出したところです